略歴・プロフィール
2005年関西医科大学医学部卒業。関西医科大学附属病院にて臨床初期研修後、病理診断科助教、本学高度医療人育成制度による米国留学を経て2018年より現職。医学博士、日本病理学会 病理専門医・指導医・腎尿路領域コンサルタント。
http://research.kmu.ac.jp/kmuhp/KgApp?kyoinId=ysokds
https://researchmap.jp/ohec_40469242
私は卒後間もなく結婚・妊娠・出産を経験し、2児の子育てをしながら病理医としてのキャリアを形成してきました。学生時代より婦人科治療を受けていましたが、結婚後、運よく第一子を授かることができました。しかし、妊娠初期に切迫流産となり、子育てをしながらも、この先医師としての人生を全うできるように専門性を身に着けていきたいと進路を模索していたところ、‘病理医’という道に辿り着きました。入局時には私自身、医師としての将来像が見えませんでしたが、その後、色々な人との出会いの中で、情熱をもって取り組める分野や夢を見つけることができました。今でも、その時々に自分に合ったロールモデルを見つけて自己研鑽しながら、夢が現実のものになるように挑戦し続けています。
仕事と子育ての両立について
これまで一線で続けてこられたのは、臨床医の夫と協力し合ってこられたことが大きいです。同じ志のもと、勉強して手にした医師という職業です。どちらの仕事の重みも同じと考え、尊重し助け合えているため、子育てをしながらも医師としての夢を追うことができました。長女が中学生になった今は、朝は5時半に起きてのお弁当作りから始まり、夜は10時に次女の塾のお迎えといった生活です。私一人では到底こなすことができず、子育てもチームワークと考え、夫と分担しながら行っています。仕事において頑張って乗り越えなければならないことは多少の無理はしますが、決して無理をしすぎず、しんどい時や疲れた時は、家のことは手を抜いています。本当にありがたいことに、娘達もできることは何でも進んでやってくれるようになりました。自分の仕事に誇りを持ち、活き活きと毎日を過ごすことが娘達にもよい影響を与えていると信じて、自らの道を歩んでいます。
女性医師として働くことについて
母親と医師としてのキャリアを同時並行することは容易ではありませんので、私のような卒後すぐのタイミングでの出産は一般的にお勧めされません。しかし、多くの女性医師にとって20-30歳代のキャリア形成に一番重要な時期にライフイベントが重なるため、いつ妊娠・出産したとしても、「いかに仕事のモチベーションを上げて、続けていけるか」が大切です。生涯の中で、子育てをする期間よりも、医師として活躍できる期間の方が遥かに長いのです。そのため、ある一定期間、多くの経験や専門性を身に着けられる環境に身を置いて、アカデミックなキャリアを形成することは、その後の選択肢の幅を広げる上で必ず役に立ちます。まずは学会で発表したことを英語で論文にしてみましょう。初めは症例報告から、少しずつ慣れてきたら症例を集積し解析を行うなど、一つ達成感を味わったら、次は少し高い目標を設定しやり遂げる。その努力の積み重ねは必ず実を結びます。
将来の抱負、今後の目標
留学後は専門領域で仕事をさせていただく機会が増えましたが、残念ながらまだ第一線で活躍している女性医師は少ないと感じています。女性医師が活躍の場を広げるためは、目に見える成果を残し、信頼を得て仕事を任せてもらうことが必要です。そのために、学会や論文発表による新知見の発信など、自らの向上心の活性化につながることは、積極的に行っていきたいと思っています。そして、与えられた仕事は、この人に任せてよかったと思われるように誠意をもってやり遂げることを心がけています。
今後は、自らのライフワークと考えている「泌尿器癌の個別化医療に直結するバイオマーカーの確立と予後の改善」を目指しながら、臨床と研究を融合することにより、診断スキルを磨いていきたいと思います。私は幸いにも指導医に恵まれ、多くの貴重なチャンスを得ることができました。これまで受けた恩を、さらに良い形で臨床や教育現場に還元できたらと考えています。
女性医師へのメッセージ
私が入局した頃と比べると、どの診療科でも女性医師の働く環境の改善や支援の取り組みが広がっています。家庭のために夢やキャリアを諦めず、パートナーと協力して、自らの道を突き進んでください。目指すべき道や歩むペースは人それぞれでよいと思います。1年~5年の短期的な目標から、10年~20年先の長期的なビジョンを設定し、一歩一歩小さな努力を積み重ねていくことが、将来様々な可能性が開花することにつながります。日々の忙しさに息詰まった時には、長い目で自らの将来像を考えてみましょう。各分野で活躍している先輩医師の存在は、励みになり前に進む力になります。私は、家庭を持ちながらも専門領域を極め、留学を経て国際的で幅広い視野で活躍されている先生に憧れ、目標にしてきました。是非、色々な場に出て、人生観を変える出会いをしてください。皆さんが、それぞれ情熱を注ぐことができる分野で活躍できることを願っています。